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2020年1月11日土曜日

大豆の思い出:『ユ・ヨルの音楽アルバム』(Tune in for Love/유열의 음악앨범)


なぜか私はこの映画をNetflixで繰り返し見てしまう。

主人公の男女の名前には、何かある。

男は、1994101日朝9時ちょっと前にパン屋に現れる。店で働く女子学生に何が欲しいかと問われると、大豆食品なら何でもいい、と答える。豆腐でも、豆乳でも。その後ずっと、この映画の中で、この青年はときどきTofuと呼ばれる。
一方、パン屋の女性の名前はMi-suなのだが、後に彼女のメアドがMisoooあることがスクリーンに映るので、彼女自身も大豆食品である「味噌」なのだと分かる。
その3年後、青年の兵役が始まるというので、連絡を取るために彼女が彼にメアドを作ってあげる。それは「dubu1001」だった。Dubuとは韓国語で豆腐なので、「101日の豆腐」ぐらいの意味だ。

結局、二人は10年にわたって、別れたり再会したりを繰り返すのだが、最後に、またもや朝9時、ラジオのDJユ・ヨルの言葉が、二人を決定的に結びつけることになる。
その言葉とは、「人の心の中で大切にしている名前は、日記みたいなもので、人生の記録そのものだ」というものだった。
そしてラジオで自分の名前が呼ばれるのを聞いたMi-suは、それがTofuのリクエストであったことを悟り、全てを投げ出してTofuの元へと走って行く。

これは物語の筋書きとはほとんど関係ないことだが、この映画はラストシーンで「名前が大切なんだ」とはっきり言っている。どうやら、二人の男女の名前が大豆つながりであることを、見ている人に気づいてもらいたがっているようなのである。DJが言うように「心の中の名前こそが思い出そのもの」なのならば、二人の大豆的な名前は、それを心に刻んでいる人(おそらく脚本家)にとって、とても大切な思い出なのだろう。

それは一体どんな思い出だったのだろうか。はっきりは分からない。けれど、なにか大豆に関わる、遠い昔の101日の朝に始まった思い出なのだろう。
そんな映画を、なんだかよく分からないけれど、私は繰り返し見てしまうのだった。